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名残の花
2007-02-26 Mon 21:19



『貴方のせい…貴方の 貴方の異形の力のせい…』


醜い姿を見せ付けて、深く深く貴方の記憶に残すの。
麗しき幼い日々がより美しくなるように。

私はもう散るけれど、貴方の心に名残の花を――。




ある日、父に連れられて大好きなあの子の家に来た。
父は真面目な面持ちだったけれど、隠し切れない程の嬉しさが容易に見て取れた。
それが何なのか解らなくて、でも最近は中々会えなかったあの子に会えるのがとても嬉しかったの。


「はるばる良く来たな。」

薔薇のおじ様が私達を笑顔で迎えてくださった。
優しくて思慮深いおじ様は私の憧れ。権力にしか目がない父よりとても好き。
そして、権力好きの父はおじ様を見て深く腰を折る。

「この度のご縁談、真にありがとうございます。」
「顔を上げなさい。」
「はい。」

父が腰を上げるのを見届けてから、おじ様を私のほうを向いた。

「由愛(ゆめ)も良く来た。菓子を用意してあの子達が待っている。」

今日の菓子はあの子の手作りだ。
そう付加えて私達を客間に案内してくださる。
それにしてもあの子の手作り!これ程嬉しい事があるかしら?
お菓子作りが大好きなあの子。腕も確かで凄く美味しい。
まぁ…あの子が作ったものならどんなに不味くても嬉しいけど。

そうこう考えているうちに私達は客間に着いた。
中からは甘い香り。そして…

「いらっしゃい!ゆめ姉!」
「ゆめ姉いらっしゃい。」

あの子、真白が居た。そして真白の弟の真黒も。

「ご無沙汰しております、真白様、真黒様。」

軽く頭を下げて挨拶する。
そうしないと、父は目くじらを立てて怒るから。
二人のいや…次代当主の真白の許しを得るまではこの態度を崩してはダメ。
でも、大丈夫。真白は直ぐに許してくれるから。

「もう、ゆめ姉!俺達にそんな態度しなくて良いって云ってるだろ!」
「…うん、そうね。久しぶり、真白、真黒。」

云い直すと、直ぐに真白は嬉しそうな顔をしてくれる。
真黒もそれなりに満足そう。

…でも、真黒の事もちゃんと好きだけど心のどこかで目障りに思ってる。
真黒が居るから私は真白に決定的に近づけない。
真黒は真白を綺麗なままでいさせたいから、少しでも邪念があると本能的に妨害する。
それには私も含まれてる。意図して邪魔されるよりはマシだけど、それでも邪魔。
ああ、勘違いしないでね。真黒も好きよ。ちゃぁんと。

「…ぇ…め…ぇ………ゆめ姉!」
「え、あ…な、何?」

いけない、自分の考えに入り込みすぎてみたい。
真白がふくれっ面で私を見てる。

「もう、さっきからぼうってしてたぞ?」
「ごめんなさいね?」
「真白、そう由愛を責めるな。疲れいてるのだろう。」

おじ様がそう嗜めると、渋々といった様子で引き下がる。
何してても可愛い。

そんな事を考えていると、痺れを切らしたような父の声。

「…っ紫元(しげん)様、その…そろそろ例のお話を…。」
「ああ、すまんな。忘れておった。
真白、そこに座りなさい。真黒は下がっていろ。」

当主の名に相応しい、威厳のある声で二人に命じる。
それに合わせて二人もまた雰囲気を変える。

『御意に』

例え父と子の間柄であろうと当主が絶対。
その証拠にさっきまで笑んでいた真白も真黒も表情を消しておじ様の命に忠実に従っている。

真黒が遠くまで行ったのを確認すると、おじ様は口を開いた。

「さて、今日お前達を呼んだのは他でもない。
次代薔薇家当主の真白と、蝶華の由愛を許婚とするべく呼んだ次第だ。」

父は満足気に口を歪め(父が嬉しそうだったのはこのせいなのだろう)、私は驚きと嬉しさに目を見開いた。
嬉しさを感じたと同時に不安になる。
私の家は蝶華の中で上位の地位にあるけれど、当主の血筋には敵わない。
そんな私と蝶華よりも上に存在する薔薇けの次代当主が相応しい訳がない。

「その…おじ様、本当ですか?私は、当主の血筋ではありませんし…。」
「確かにお前の云うとおり、本来ならば蝶華の次代当主槐か、椿乃の分家から貰うのが一番良い。」

だがな、と一呼吸おいておじ様は優しく微笑む。

「せめて夫婦となるなら、仲の良いものがいいだろう?
それに、幸いお前は蝶華でも上位だ。問題はない」

ああ、ああ…っ!なんて事だろう。神は私に味方している!
私は初めて神に感謝した。心の中で咽び泣いた。多分現実でも。

「このような身に余るほどの光栄…なんと云ったら良いでしょうか?」

私を見て、おじ様は満足そうに笑む。私も笑みを返す。
それで、すべてがハッピーエンド…に、なる筈だった。

「…この話、お断りできますか?」

静かで淡々とした声。

「…え?」

今の今まで沈黙を保ってきた、愛しい真白の声。
公の時の真白は柔らかさなんてなくて、凛とした冷たさを持つ。
まさに、それだった。

「何故です?!家の娘では不満ですか?!!」

父が焦ったように叫ぶ。
真白が断れば、安定した権力の待つ未来がなくなってしまう。
そんな父に落ち着いた様子で真白は頭を振った。

「彼女の事は好きです。姉の様に慕っています。
ですが…許婚となれば話は別です。」

真白はそう云いきると、一瞬私に目を向けて目を軽く伏せた。

「私は、恋をしたことなんてありません。
結婚というものもよく解りません。でも…彼女と一生を添い遂げれるかと聞かれたら、即座にいいえ、と答えるでしょう。」

この子は綺麗で純粋で無垢で、思いを伝える事は苦手だけど、心に素直だわ。
…だから、この言葉にも嘘はない。

「謹んで、この縁談お断りさせて頂きます。」

三つ指をついて、深く頭を下げる。
結っていない純白の髪が肩をさらさらと流れる。うなじが現れて、幼さの中に色を感じる。
…絶望的な瞬間なのに、私は真白の美しさばかり見つめてる。











愛してるわ、真白。誰よりも何よりも。
だから…貴方に愛してもらえない私はいらないの。
貴方の心奥底に刻み付けて、消えてあげる。






長くなったから一旦きりました。
真白の覚醒編でっす。

え?こんなんよりリクのヤツ書けって?
か、書いてましゅよ?!(動揺して噛んだ/ぁ)
……ちょこっとずつだけど。


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