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水の鏡と… 第二話 『夜の月』
2006-12-09 Sat 00:44

いつの間にか夜は明けて

空は白み

見えやしなかった月が

ようやく

その姿を現した







【水の鏡と… 第二話】




知らない男の人。
彼だけではない、自身の事も、あの血溜りも、肉塊も、私の傍にある不思議な毛玉の事も解らない。
解っているのは誰かが柔らかく呼ぶ私の名だけ。

思考に耽る私の身体がふわりと地を離れた。
思わず驚いて、抱き上げた張本人の首に捕まるがふと…自分の姿を思い出す。
なぜかは知らないが私の服も私自身も血に塗れていて、必然と彼の服は血に汚れる。
記憶のない私から見ても、高いと一目で解るスーツ。今更だがせめてこれ以上は…と、下ろしてくれるように頼む。
でも当の彼は「子供がそんなことを気にするもんじゃない」と云って黙ってしまった。
それからは唯淡々と歩き続けるだけ。
どうしてなのか、怖かった。この抱締めてくれる手を離されることが。
多分、心のどこかで知っていたのだろう。私に残されたものは何もないのだと。縋る事が出来るのはこの人だけなのだと。
知らぬ間に涙が溢れてきた。
一筋、二筋…、流れるたびに彼のスーツにしみが出来る。
とめなくては、と思うのに止む事を知ってくれない。

歩みが止まった。

気付かれてしまったのかと、身を竦ませた。怒って私を置いていくのだと思って。
だけど、彼は行ってしまわなかった。
涙を拭い、さっきよりも強く抱締めて「大丈夫だ、俺がお前を守るよ」って…。
抱締めてくれる手の低い体温に安心して、私はそのまま眠っていった。







さっきまで泣いてたこの子は、今は穏やかに寝息を立ててる。
それからまた少し歩いて、親父が俺に買い与えたマンションについた。
さっさと中に入って最上階にある俺の部屋に行き、子供をベッドに寝かせる。
だけど、その拍子に目を覚ましてしまった。
不器用ながらに優しく頭を撫でて「まだ寝てていいぞ」と云ったが、子供は小さく頭を振って身を起こした。そのまま、部屋の中を見渡して「…ココは、どこだ?」と洩らす。
子供にしては大人びた口調で、でもその声には赤ん坊のように怯えている様子さえある。
その怯えを拭ってやろうと極めて穏やかな声で「俺の家だよ」って教えてやる。
だけど、ソレぐらいの事じゃ状況を良くすることは出来なくて、子供はまだ忙しなく辺りを警戒してた。
暫く様子を見てたけど、痺れを切らした俺は子供に「名前は?」と聞いた。
少しの間答える素振りを見せなかったが、やっと口を開いて小さく「水鏡だ…」と呟いた。
「そうか。俺の名前は…」云いかけて止め、少しの空白の後に「ナイトだ。俺の名前はナイト」
なんで、そう名乗ったのかは自分でも解らなかったが、それが子供に…水鏡に呼ばれるのに一番しっくりきたんだ。
水鏡はナイト…?と繰り返した。それは声にならない位の小さい声だったけど、聞こえた気がしてたんだ。
「そう、ナイトだ。俺がお前の事を守るよ、水鏡」
その言葉が俺の口から自然に洩れて、水鏡は嬉しそうに笑んで今度ははっきりと「ナイト…」って。

その声はあの時の歌のように、不思議さも、妖艶さもなく、ただただ澄んでいるだけの声だったけど、俺には一番心地良く聞こえた。



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