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水の鏡と… 第三話 『そして月は沈み 夜は明ける』
2006-12-09 Sat 00:46

小さな子供が望んだのは孤独

心を許さず 悪夢に怯え 零れそうな涙すら飲み込んで

もしかしたらそのままの方が良かったのかもしれない

笑顔を望まなかった方が

俺自身の為にも この子の為にも

でも 望んでしまった

望んでしまったが故に


もう 手放せない…






【水の鏡と… 第三話】






ソファの上で小さく蹲っている幼子を見て、男を溜息をつく。あの夜、小さな笑みを見せた幼子は気が抜けたのか、そのまま気絶するように眠りに付いた。昼頃目を覚まし、男は幼子を起こした。また、あの笑みを見られるのだと期待しながら。だが、幼子は瞳を開いて、見せたのはあからさまな拒絶だった。
そこまで思い出して男はまた溜息をつく。そのまま出来上がった朝食を手に、幼子の元へと行った。
「出来たぞ、メシ。」
必要な言葉だけを発し、目の前に置いてやる。幼子は食事と男を数回交互に見、やっと食事に手をつける。その行為は食事の前だけではなかった。男が何か幼子にしてやる度に、まるで確認するようにこの行為をする。男がなにも云わずに見ていて、とうとう手をつけるのだ。
「…美味いか?」
細々と食べている幼子にそう尋ねる。幼子は手を止め男を見やり小さく頷く。愛想も何もない行動だがこれでも進歩したのだ。最初の頃は頷くどころか男のほうを見ようともしなかった。笑顔は見れないが少しづつ近付いてくる様は嬉しかった。

それからまた数日後の夜。幼子を拾った日と同じく雨が降っている夜。男はこれまた同じく父親の都合でパーティーに出なくてはいけなかった。ラフな格好からスーツに着替え髪を整える。そうしている間にふと、視線を感じた。この家には男と幼子しかいない。男が振り返ればやはり幼子がいた。部屋の入り口から男の行動を不思議そうに眺めていたのだ。男は幼子を手招きする。戸惑いながらも幼子は男に近付く。
「あのな、水鏡。俺はちょっと用事で出かけなきゃダメなんだけど…留守番できるか?」
幼子はその問いに小さく頷く。男は嬉しそうに微笑み「いい子だな」と云いながら、幼子の頭を撫でた。撫でながら時計を見るとそろそろ出かけなくてはいけない。
「じゃぁ行って来るな?メシは用意してあるからちゃんと食えよ?」
そう云うないなや男はさっさと玄関に向かう。靴を履き、出る寸前に一度家の中を振り返った。すると、幼子は玄関まで付いてきていたのだ。何か云いたげに男を見つめる。「どうかしたか?」と男は尋ねた。言葉を発しようと幼子は口を開くが、結局頭を振って小さく「いってらっしゃい…」とだけ云った。久しぶりに聞いた幼子の声に男は嬉しそうに微笑み「いってきます」と返し、出かけていった。

結局、男が帰ってきたのは明け方だった。父親につき合わされていたのだ。酔ったままの頭でも、幼子の事を考慮し出来たのか静かに家の中に入る。まだ朝は早く、幼子は寝ているはず。なのに、寝室の方からは声が聞こえてくるのだ。男は不思議に思い、そっと寝室の扉を開く。中を覗けば幼子は起きていた。それだけではない、感情の起伏を見せなかったこの子が泣いていたのだ。男は驚き、声を掛ける。
「み…水鏡……?」
幼子は男の声を聴いた瞬間、走りより男に抱きつく。
「ないと…ないと…ないと……っ!」
男が教えた名を舌ったらずな声で何度も呼び。初めてのことに男はうろたえ、幼子の背を擦ってやるしか出来ない。
「どうかしたのか?怖い夢でも見たか?」
幼子は唯首を横に振るばかり。
「………」
男は無言のままあの夜のように力強く幼子を抱締めた。
どれくらい、そうしていただろうか?幼子の涙も収まり、泣いたせいで荒いでいた呼吸も正常に戻る。
「それで…一体どうしたんだ?」
優しく再度そう尋ねると、幼子も今度は口を開いた。
「…ないとは、わたしをすてない……?」
「へ…?」
「ないとは、わたしをひとりにしない…?」
「水鏡、お前……」
「ひとりは、やだよ……っ」
それは、両親を亡くした幼子の本心だった。水鏡自身はその事を覚えていないかもしれない。でも心のどこかでは記憶しているのだ。そして、また誰を失う事に怯えている。
「俺はどこにも行かない。云っただろ?俺がお前を守るって」
「ほんとうに…?」
「本当に。」
「ほんとにほんとか…?」
「本当に本当だ。」
まるで言葉遊びだ、と思いながら男は答える。その時の男の顔は男自身が自覚している程に柔らかく微笑んでいた。そして、幼子も。初めての笑みよりも尚深く、柔らかく、甘い笑み。それを見た男は声を失う。
「まるで、麻薬だな…」
誰にも聞こえない、自身にさえ聞こえないほどの小さな声。それはとても、満足気な声音だった。





求めてはいけなかったのかもしれない
手に入れたら最後 手放せない
良くない事かもしれない
でも それすらも甘美

まるで人が恋焦がれ それ故に堕落する
穢れなき青空





意味不明

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